堕天使の煉獄

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2014-12

19

03:18:58

冷え込む~

雪降ってるし~
寒いはずだわ。

ってことで、電気カーペットの座布団サイズのものを
お布団の中に湯たんぽ代わりにいれつつ、読書。

高野和明・著 「ジェノサイド」読了。


あんまし日本の小説っぽくない感じで
海外のSFを読んでいるかのような内容だったり。
その手のにありがちな、映像化を見越したような展開というか
映画的な見せ方というか。

なにげにちょっと前によんだ伊藤計劃・著「虐殺器官」も
そんな感じだったな。
日本の人でもこういう感じの書く人いるんだなー。
というか、単に日本の物で、そっち系のジャンルを読んでないってだけなのかも
知れませんが。

しかし、著者の情報を見てみると、「13階段」というタイトルで
乱歩賞とってる人だったりして。

乱歩賞はミステリー系だけど、「ジェノサイド」は、ジャンル的にはSFだよな。
もちっとしらべてみると、もとは映画系の出の人らしい。

その辺で、映画的な展開というのも納得な感じぽ。


で、その内容というと

ファッキンアメリカ、民主主義は数の暴力による独裁政治だ
人間はケダモノだ、知性なんてありゃしない。

的な感じで、そこにそんな中でもいい人居るよ的な振る舞いをする主人公てきな
ある意味わかりやすい展開のストーリー。

あと、父と息子がわかり合う系の話を盛り込んでいるところも
なんか海外小説っぽい印象を。


なにげに最近なぜか良く続いているのだけども
ドーキンスの「利己的な遺伝子」でてきたネタが結構多かったりして。

進化した人類種というのがでてくるのだけども
縄張りが重なった近親種の争いの際に、

何もしないタイプに
出会った相手は即皆殺しタイプと
攻撃されたら攻撃仕返すしっぺ返しタイプ。

などなどいろんな集団がいるなかで
どの集団が有利なのか。淘汰されずに残れるのかとか

生存を第一義とするならば、自己犠牲的な利他的行動はどう説明するのか。
とかその辺のネタ。

結構多く入ってるので
巻末の参考文献に入ってたりするのかなと思ったら入ってなかったけどw

かなりのウエイトというか、ほぼなぞって引用に近いレベルに感じた
貴志祐介の「新世界より」でも参考文献には無かったような。

もはや「利己的な遺伝子」は古典レベルなので、二次書物のなかに
入ってしまってるのかもしれないぽですが。


しかし思うのは、この辺のネタを
海外の人が書くのと、本書の様に日本人が書く場合とでは
やはり大きな隔たりがあるなと。

海外の人の場合、どうしてもキリスト教系の視点が入るため
場合によっては人が猿から進化したっていうだけでも
発狂したりするのだけども。

あとは、アメリカによく見られる特徴的な「正義」の解釈も
日本人的にはなじみのないものですよね。

具体的に言えば、勝者の理論というか。
元から住んでた原住民をぶっ殺しまくったあげくに
ここは神から与えられた土地だとか言っちゃう感じのアレですね。

その辺の感覚が、生来持ち合わせていない、すり込まれていない
日本人の感覚と大きく違うところですよね。

なので、この手のネタを扱った海外作家の本だと
何を騒いでいるのか、何を問題にしてるのか、ぴんとこない……
ってコトが結構あったりして。

上記の、人が猿から進化した説を聞いて、なぜ怒ったり嘆いたりするのか
さっぱりわからんですよね。

その理由というのは、「神が人間を作った」というのが覆されるから。

なのですが。

はっきり言って日本人的感覚からすれば「ぽかーん」ですよね。
でもそれが刷り込みによって、信じ込まされているのがキリスト教圏の人だったりして。
べつにそれが悪いと言っているわけではなくて
海外の進化論とかその辺のネタのSFはきまってこういう
バイアスが掛かっているんですよね。

(ダン・ブラウンの「天使と悪魔」では、反物質の対消滅=プチビッグバン
つまりこの世界は物理作用で生成されたのであって、
神が作った訳ではない。
ってなかんじでバチカンの教皇が出てきたりして大事になってるの話なのだけども。
何を問題にして、何が問題なのかさっぱり共感できなかったりするw)


それが本書にはほとんど無かった。
そこがなんか逆に新鮮というか、そのへんの首をかしげるような
部分が無かったので、あるいみホッとするような感じで。
その辺が日本人作家の作品だなーという。


あとは、とある大国の大統領が言う、「悪の枢軸国」というものがあるのなら
それはUで始まってSが続いてAでおわる国であり
世界に混沌をまき散らしている悪魔のごとき人物といえば
その国のTOPだよね。

っていうのをこれでもかってぐらい書いてる本ですねw

そも、人間という存在自体にも悲観的な感じで
なんかいろいろと、自分の持ってる考えとか思想とか似通った部分が多くて
むしろわりとこういう考えって普通?
とさえ錯覚してしまいそうになるレベルw


惜しむらくは、きわめて個人的な感想としては
為政者の人間性だとか、独裁政治が行われる土壌だとかプロセスだとか
人間はなにも特別な存在でもない。
むしろ低俗で野蛮で刹那的で盲目的だとか。

それから、薬学に遺伝子に、種の進化、淘汰。
戦争描写に軍事活動に諜報機関。

アメリカの大統領の仕事ぶり。

どれもすでに他の作品やら、学術系の論文やらで
見知ったことばかりだったので
新鮮さは無かった事かな。

バミューダ-島近辺に出てくるアレも……
本書の発行は2011年だけど……

それ以前にとっくに出てきてるネタだよな。
読む前からネタが割れちゃってたりしてw

と、SFでの楽しみである
新しい発見や、新しい見識、知識、といったものが
ほとんど無かったなーという点がちょっと物足りなかった結果に。

んーこの辺はなんというか。
それなりにいろいろと読んでると
無駄な知識もそれなりに蓄えられちゃうので
新鮮な驚きって物がなかなか手に入らなくなってしまっちゃうんだろうなーと。

最近では
アダム・ファウアーの「数学的にありえない」なんかが
もっともがっかりした例かなぁ。

10~20年以上まえに出てたのなら面白かったかもしれないけど
今読むとどれも手垢のついたネタばかりで
新鮮さがまるでなく、むしろアラばかり目立つ感じで。

なんかひどく「スれちゃった」な。
とか実感したりして。

で、この本がベストセラーで大絶賛されてるのとかみると
その絶賛してる人って
全然普段本とか読まないタイプのひとなんだろうなー
という印象を受けたしして。

具体的な例を挙げると、
未来を予知する予知能力とは、未来を選択する力事だ!
ってそれなんてナイトヘッド? とか。
(ナイトヘッドは1992年に制作されたTVドラマ)

でもコレって単に、歳を重ねて読書をかさねると
新鮮味を感じる事がどんどん減って行ってるってだけの事なんですよね。

なので作家さんに罪のあることではない部分で勝手にがっかりしてるだけなのだけども。


が、新しければ良いというわけでも無いんですよね。

たとえば最近読み進めている
森博嗣のS&Mシリーズなんかは
結構昔の作品だけども、今見ても普通に面白い。
人物の掛け合いとかが独創的で。
(ミステリー部分は……微妙だけどw)


でもその辺は……出会いの「縁」ってやつなのかも知れませんね。

すでに知ってることがネタの本を読んでも新鮮味にかけるけど
もしそれが知らなければ。

今回のも、たとえば「利己的な遺伝子」を知らなかった時に読んだならば
当然受ける印象はまた違った物になっただろうし。

となんか文句ばっかいってる感じになっちゃってますが
普通に面白かったです「ジェノサイト」。

んでも、なんでこの本を手に取ったかといえば
最初の方にも書いた伊藤計劃・著「虐殺器官」が結構面白かったからで。

「虐殺」つながりでなんとなく目について。
なんの前情報もなくふと手に取ったところ、
中身をパラ読みしてみたら面白そうだったので。
ってかんじの出会いだったりする。
(そんな理由かよw)

「虐殺器官」のほうは、日本人離れした海外のハードSFってかんじで
こういうの書ける人いたんだ……と思ったのですが。
「ジェノサイト」の方は王道の海外SFって感じ
(映画的というか。映像化されたものが映画的演出とともに浮かぶ感じというか)
で、これまた日本人っぽくない作風で、
それに上記のようなキリスト教圏のバイアスの掛かっていない……というところは
新鮮だったりして。

やはりそこいらへんの感覚の違いは、
海外作品と、基本無宗教な国内作品とで大きく違うと感じる部分だったりするぽ。

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